高いものを買った(YSL購入体験記 後編)
高いものを買った(YSL購入体験記 前編) - 長風呂の湯冷め
ほとんど買うつもりで、店舗に見に行こうと思った。
それなりの格好をしないと(気持ち的に)店に入れない。
せめて観光客のお客さんがいれば、観光客は動きやすさ最優先!みたいな格好をしていたりするので、多少浮いても許される気がするのだが。
ワンピース1枚で済ませたかったが合わせられる靴がことごとく雨に弱いので却下。
薄汚れたレインシューズも恥ずかしいので、ドクターマーチンの6ホールに決めて逆算していく。(マーチンもほんとは濡らしたらいけないらしいが、まあ頑丈なので手入れでなんとかなる)
バナナ・リパブリックのきれいめなカーゴパンツに、黒のノースリーブ。
オフィスカジュアルの範疇に収まる格好が似合う。なぜなら骨格ストレートだから。
カバンは、YSLと同じ土俵に立たないよう、ド派手なビニール製のカバンにした。
そして個人的に、店員さんにあしらわれないコツは他店の買い物袋を下げていくことだと思っている。
この客は、今日は買い物してるんだな、と思われると熱心に接客される(良くも悪くも)
手始めにデパ地下で人に渡すお菓子を選び、それからJo Maloneに行った。入店制限の結果、店員さんとお客さんがマンツーマンで店内を独り占めしている。
先日の資格試験中、これに受かったら新しい香水を買ってもよいと思ったので、その約束を叶えてやる。
いくつか香らせていただいて、出たばかりの限定品に決まった。
(入店制限の列が伸びている上にマンツーマンで接客されたら、試すだけとは言えずに確実に買うのではないか。きっと前より売上は落ちて大変なんだろうけど、冷やかしの客が減って快適かも、、と思った)
Jo Maloneの紙袋を下げ、いつもより多くふりかけられた香りを纏って、満を持してYSLに向かった。
店の前をうろうろすると逆に入りづらい気がして、一発で決める。
ストリートギャングみたいなファッションの男性が店員さんを若干困らせていたようだが、店員さんは折り目正しい接客をしていて、ハイブランドの接客業はすごいなと思った。
若い店員さんがそちらに取られているので、カバンの棚を見上げていたら、目だけでイケオジだと分かる店員さんが近づいてきた。
細いネクタイが似合う、俳優さんみたいな人だ。
顔採用とまでは言わないが、そのブランドの価値を体現しお客様にコーディネートできる人を採用すると美人しか残らないだろうなと思った。
いつか持ちたいと思ってはじめて来ました、と素直に告げて、この小娘にご教示をという関係性を作ってしまう。
このスカーフもご一緒にいかが、マダム?という客ではないのです、イケオジ。
実際に持ってみると、さすがに口には出さなかったが、私に似合う。
ハイブランドが似合うとうぬぼれるつもりはないが、骨格ストレートには「かっちりしたもの」「上質な感じのもの」が似合うというのは本当だ。
欲しいものが似合うもので良かった。きっと小さいキルティングのポシェットは似合わなかっただろう。
会計の間にこちらを、と小さいエビアンとストローとお手拭きが出てきた。
ペットボトルなのはコロナ対策かもしれない、しかしお客様にペットボトルに口をつけて呷らせるなんてできないとストロー付きなのか、そして紙ストローでエコロジカルアピールか、と色々な空気を感じた。
人が見ていないのをいいことに、アルコール入のお手拭きで片腕分の香水を拭き取る。
水を飲む時間なんてないだろと思っていたが、予想よりお会計と梱包の時間があった。
ハイブランドはあくせくしないらしい。
そしてきっと、表に車を待たせてあるから、な客が来たら、客の決定と同時にインカムであらゆる人が動き始めて最速で品物を渡すのだろう。
ボーナスを握りしめた小娘のハイブランド入門、たいへん楽しかった。
そう思った若者が、年に1つとか継続して買う顧客になればあの店員さんの成功なのだろうけど、そんなに買えないので、10年ぐらい先にまた買いに行きたい。