同僚の退職
春になったら同僚が会社を辞めるらしい
さらっと発表されて内蔵がフリーフォールしたかと思った
寂しさと衝撃がないまぜになったときに起きるフリーフォール。
肋骨の下がぽっかり空いたような気持ちになる
冗談ぽく辞めそうなことは時々言っていたし、辞めるのかなとドキドキしたこともあったが、何度目かの予感はあたっていたらしい。
誰だって辞めたいよね会社。でもそれは仕事をせずに遊んで暮らしたいという妄想であって、本当に「この」会社を辞めたいと思い、行きたい会社を見つけ、内定を取ってくるだけのエネルギーを割いたかと思うと、彼女が急に遠くに行ったように思える。
ふと心から自然に、「何でもするから一緒に働いてほしかったのに」と思って、あとから言うのは勝手というやつだなと思った。
私には何でもするだけの気概もなく、余裕もなく、彼女の選択に口を出す資格もない。
誰かにはしていたかもしれない相談相手にもなれず、「あなたには先に」と伝えられる相手でもなかった。
寂しそうな顔を見せてもいいのか、せいぜい憎たらしい顔をしたほうがいいのか、なんにも動じてませんが?という顔か
いずれにせよマスク生活では伝えたい表情も伝わらないだろう
これがリモートワークだったら動転して個人メッセを送り後悔していたかもしれない
今こんなに悲しんだって、喋りたいと思ったって、時が経てば薄れることはわかっている
少しでも記憶に残りたいと、変なことをいうのはやめておこう
そして、彼女の誕生日にはLINEスタンプを送ろう
その頃になれば、スタンプを送ることが自然かどうか落ち着いて判断でき、きっと送らないだろう
まるでほとんど失恋だと思う